たとえば、その痛みから逃れるなら

死を孕む激情が、ああ!
どうかぼくを蝕みませんように、
あなたを抱いて眠るぼくの右腕に
ただそれとわかる焼印だけを残して
そうしていつでも
ぼくに寄り添っていますように

この炎が、
いつまでも絶えることのないように
ぼくはその身を焼き尽くすのです
あふれる焦げたその四肢を
放り出してゆくのです
愛おしいこの苦痛を、
かすかに灯る理性でもって抱きしめます
そうしてぼくは、
痛みそのものになるのです。

だからもうどこも痛くないねって
誰かに笑いかけたそのからだは
オシマイの激情の内側に居る
ぼくはまた
「何も変わらないね」
と呟いて
焼印をただ
愛おしそうに撫ぜる


さようならさようなら
ぼくが居られなかった、
やさしくて愛に満ち溢れた世界。


(橘優佳)