うた

光る双眸

ぼくが夢見ていたあの星には、もう永遠に手が届かないのかしら当然のような顔をして薄氷の上を歩く真っ直ぐ前を見つめて力強く足下を踏みしめる氷が割れることはないその裏にあるものを、ぼくは見て見ぬふりで殺しているきちんと息ができなくなるようにてい…

明くる日

吐く息がしろく染まってもそれは世界が一周したことの理由にならない地平線の向こうが見たかったぼくの思う、理想の向こうを見たかった ごとり、と音を立ててぼくの頭蓋は朝焼けを見る崩壊した世界を映すその眼は捉えきれない黒だったその内側に詰まる胎児の…

隔離空間の所在

優しく奏でられるようなやわらかな言葉の不在ぼくの舌に生い茂る棘さえも何も語らない時の狭間だ声をかけられて振り向いたら誰も居なかったと思ったのは一瞬のことだったかぼくらはいつに生きているかあの真白い空間はその住所は、ぼくに知ることができない…

世界組成

虹色の薄氷の張った川をぼくはそっと踏んで歩く踏んで歩く鮮やかな世界がぼくの目の前で散ってはじけた粉々になった破片は、肩や喉に刺さるそうして降りつもるぼくの色彩は変わらない殆ど永遠に暮れては昇る月を優しいものを見たい何よりも愛していて惜しみ…

永久の氷海

優しい色をした雪なんて食べる気になれない溜息だけをひとつ吐いて残らず溶かしてしまいたい時が流れない川の上を歩いて「ひとりになってしまったねえ」ときみは言うかい途端に森から影が伸びてきてきみを攫ってしまうことも知らないままにぼくがきみの居な…

思う、世界

愛するものがたくさんあってどうしたらいいのかわからなくなる。すべてが愛おしいのにすべてを愛するのは難しくて泣きそうになる。なにもかもが優しくてぼくはなにもかもに優しくしたいのによくその通りにはならなくて悲しくなる。世界はとても優しくてぼく…

必要不可欠なぼくらの空洞

ぼくは消え入りそうなこの中身を持たない空虚な言葉でぼくの空洞を満たす満たさなくてもいいことと決して満たされないことを知りながらぼくはさながら道化のように空洞を埋めてゆく空虚の中にそうして空虚が積み上がりそれでもぼくの口の端は言葉を紡ぎ続け…

たとえば、その痛みから逃れるなら

死を孕む激情が、ああ!どうかぼくを蝕みませんように、あなたを抱いて眠るぼくの右腕にただそれとわかる焼印だけを残してそうしていつでもぼくに寄り添っていますようにこの炎が、いつまでも絶えることのないようにぼくはその身を焼き尽くすのですあふれる…

せかいのはなし

心臓を捕まえなくても人間を抱きしめたならその鼓動を知ることができたそれだけの話だった(人間から取り出した心臓は、もう既に脈打ってはいないのだ。いないのに。)

Wissen

無音で響く吐息ぼくらのパトス消え入りそうなその光が新しい日の目を見るのはいつだ解き放つ方法を知らないぼくは嘔吐によって自らを損なうそうして表現をするでも、それでもたとえばぼくがその姿を嘲笑い彼らに向けて満面の笑みを放てるようになれればああ…

ぼくは彼だと言ったときにそれは間違いであるか?

「あなた自身はもう滅んでしまっているのだろうか」死にゆく彼女の手は紅に染まっておりほのかに温もっていたきっとぼくらみんな犯罪者だ心臓の鼓動を偽って操り人形のふりをしているのだそうしてそのまま朽ちてゆくも脈動に想いを馳せて死んでゆくもいずれ…

動物的理性

知性を学ぶことのない理性だただひたすらに動物のように何かを追い求めるこの世でいちばん阿呆と言ってもいいそんなロゴスだ 目指す先が幸福でないことはよくわかっているきみはなぜぼくなんぞに宿ってしまったのだ規則正しい呼吸ができずにうずくまる浅くゆ…